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2013年5月

2013.05.23

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 スタニスラフ・スクロヴァチェフスキさんが常任指揮者になってから、ずっと読売日本交響楽団の年間会員になっていて、毎月演奏会に行っていたのだけれど、先頃の値上げが著しくて退会しました。

 演奏自体も好きだったし、レパートリーも良かったので残念なところもあります。とくに下野竜也さんのドヴォルザークは、迫力があって良かったのに、下野さんも卒業みたいな感じなので、あまり未練はありません。

 けれども、年間会員はやはり一公演の値段は安いので、どこかほかに良い楽団はないかと、かなり探してずいぶん迷いました。
 もちろん金額と、演奏会の回数と曜日と場所がだいじで、なかなかコレというのが見つかりません。

 普段からクラシックを聴くのは好きなのだけれど、特別くわしいわけではないので、演奏も指揮者もハズレがないのはNHK交響楽団なのだろうけれど、人気も質も良いだけにほかと比べてグンと高額です。
 ちゃんと受信料を払っている人には、割引があっても良いのにと拗ねたくなります。

 けっきょく、だいぶ吟味した結果。東京交響楽団にしました。

 演奏は、以前「題名のない音楽会」の収録で聴いた程度でしたが、指揮の飯森範親さんは良いんじゃないかという印象があったし、新しい客演指揮者のクシシュトフ・ウルバンスキさんが若くて期待がもてそうだったので思い切って決めてしまいました。
 友情でも恋愛でも趣味でも出会いは偶然ですから、あまり意味も希望も期待もなくて良いものです。

 けれども、偶然の出会いだからこそ、大切にしないと後悔することもしばしば。
 読響との別れも、そうとう考えての末だったのですが。出会いと別れをくり返して、僕たちは大人になっていくものです。
 悲しみを知っているから、喜びをあたえられるんだよね。

 で、東響といえばミューザ川崎シンフォニーホールという、ステキな意匠の会場をフランチャイズにしていて、一度行ってみたいと思うのですが、年に五回も毎回行くのは、僕の家からだと東京の北から南まで縦断しなければならないので、ちょっと遠いなと感じてしまって、東京オペラシティの六公演にしました。

 サントリーホールが定期演奏会で十回なのですが、六本木に馴染みがないせいか、距離は遠くないのになんとなく気分的に遠い感じがして、良いホールだと思うのだけれど、ちょっと行くのが面倒くさいですね。
 公演後に会場をでたときの「コンサート聴いたな感」はすごくありますけどね。
 前が開けていて、駅が遠いので混雑しないのが良いんでしょうね。東京芸術劇場なんて、劇場内のエスカレーターから渋滞していて、外の長いエスカレーターも混んでるのに一段空けて乗るものだから、どんどん人が溜まってイライラします。
 うしろから蹴っ飛ばしたりしたら大変なことになって、僕は出入り禁止になってしまうだろうから、演奏中の眠気同様ガマンしていますが。

 以前、会場へ上がっていく途中で、あの長いエスカレーターが急に止まったことがあります。
 一番下で、乗り損ねたおばあさんが転んでしまって緊急停止したのです。
 びっくりしましたよ。
 転げ落ちた人はいませんでしたけれども、みんなつんのめりました。坂本龍馬のように前のめりのまま死んでいきたいと、志士ならばだれもが思うところですが、急ブレーキで死んだのでは浮かばれません。
 だれも死なず、けが人もでなかったのは幸いでした。

 しかしそれから、止まったエスカレーターを上まで歩いて登らなければならないのが辛かった。
 止まっているエスカレーターって、なんであんなに気持ち悪いんですかね。
 運んでくれると思い込んでいる感覚があるのに、全くサポートしてくれないので体がいじけるのでしょうか。
 それともホーンテッドマンションの、天井が高くなっているのに自分たちが地下に下がっているみたいな混乱した不快感と似ているのかしら。

 それはさておき。東京交響楽団の演奏です。

 僕は、東京オペラシティのシリーズなので五月から隔月です。
 最初のプログラムは、秋山和慶指揮。

 ドビュッシー(ビュッセル編)「小組曲」
 ラヴェル「ピアノ協奏曲」「左手のためのピアノ協奏曲」「ラ・ヴァルス」

 僕は、現代音楽って考えすぎていて美しさや心地よさと反対の方向へ行ってしまっている作品が多くてそれほど好きではないので、ちょっとガッカリしていたのですが。
 じつは「好きな画家は?」と聞かれて最初に思い浮かぶのはフランク・ステラさん。
 それに、ストラビンスキーの「春の祭典」は、じつによく聴くCDのひとつですから、口で言うほど現代物が嫌いというわけでもないのかもしれません。

 それに、とても良い演奏でした。演奏冒頭のフルートの音からして美しく、つかみはオッケーでした。
 ピアノのミシェル・ベロフさんもすばらしくて、たぶんロビーですれ違ったのは中村紘子さんだと思うし、隣の席では辻井信行さんが後ろのほうで聴いているとウワサしていましたから、きっと高名なピアニストなのでしょうけれど僕は知らなくて、知らなくてもその良さは全身で感じました。

「左手のためのピアノ協奏曲」というのは、最初から最後まで左手だけで弾くものだとはおどろきでした。
 CDだと、まさか左手一本で弾いているとはわからなかった。
 プログラムの解説によると、戦争で右手を失ったピアニストのために作曲したものだそうで、本当に左手しか使えない人が弾くと、またちがった感じになるのかしらと考えていると。
 帰ってからミシェル・ベロフを検索したら、彼も右手をケガしてピアノが弾けない時期があって、この曲で復帰をはたしたのだと知って、なるほど生半可ではない迫力のある演奏ができるのにも納得しました。

 東京交響楽団。当たりです。

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