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2011.11.30

噺の話

 落語家の立川談志さんが十一月二十一日に、喉頭癌の再発で亡くなりましたので、今回は落語の話。

 僕が落語を積極的に聞くようになったのは談志さんがきっかけです。高校を卒業して、美術学校に通っているころテレビで「落語のピン」という深夜番組がやっていて、談志さんが毎回一席と若手・中堅といった落語家を紹介するようなかたちで高座を放送していました。
 一人の時間は三十分もなかったと思うので、NHKの「日本の話芸」とか、TBSの「落語研究会」ほどはじっくりと長い話はやっていなかったと思いますが、おじいさんがやる落語じゃない、いまの落語といった感じで、毎週たのしみに見ていました。

 そのとき、抜群に輝いていたのが春風亭昇太さんと立川志らくさんでした。
 あのときの、志らくさんの「子別れ」以上の子別れは、未だ見ていません。志ん朝よりも小三治よりも、すごかった。
 子別れとは思えないはやさで、やっちゃうんですけどね。

 その番組が終わってしまってから、劇場に聞きに行くようになりました。
 もちろん、談志さんが中心で、昇太、志の輔、志らくと聞きました。
 東京の寄席は、落語協会と落語芸術協会が交互に使っているため、落語立川流は出演できないので劇場で独演会やグループの会をやることになります。
 チケットぴあなどでチケットを購入して行くのですが、テレビの影響で当時は立川流が人気でした。いまも人気の独演会は、かなりチケットが取りにくいですけどね。

 年末の談志独演会は、みんな「芝浜」が聞きたくて銀座の中央会館が満員になります。最初に行ったときは、けっこう後ろの席だったと思います。
 芝浜という落語は、最後の場面が大晦日なので師走にやることが多いみたいです。

 ちなみに「芝浜」とか「子別れ」とか言っていますが、本来落語には題名がありません。寄席で話が重ならないように「芝の浜」とか「目黒でサンマ」とか特徴をノートに書いていたものが、統一されて呼び名になったものです。もともと符丁みたいなものですが、客も名前があると話すのに便利なので使うようになったのでしょうね。

 芝浜といえば、年配の方には桂三木助なのでしょうけれど(当時は三木助さんしかやってないし)僕ら世代には談志の芝浜、芝浜の談志です。最初に生で聞いたときには泣きました。ボロボロ泣きましたよ。
 のちに、談志さんがノドをわるくして声がだしにくくなったときには、良いときの芝浜に間に合って本当に良かったなあと思いました。しかし、その後も芝浜は進化して、伝説になるような高座が何度もあったようです。スゴイですね。

 談志さんの芝浜は長いです。僕はあまり長い話は好きではないのですが、一つ一つの場面がリアルで良いんです。
 イヤホンで歩きながら聞く音楽ではなく、ビデオで見る映画でもなく、椅子に座って聞く、映画館で見る、古き良き音楽や映画のような一席だと思います。

 ちなみに、落語は話を聞きに行くのではなく、落語家を見に行くものなので、実際にはなんの話をしてもかまわないのですが、文楽さんがでてきたら「明烏」とか、柳好さんなら「野ざらし」なんて叫んじゃうんですね。

 二十年前で、あんなにスゴイのに、晩年にはまるでジャズの即興演奏のように登場人物が自在に動いてしまっていたようです。
 談志さんの高座を生で聞けなかった人は残念でした。CDやDVDでもすばらしいのですが、やはり空気感は味わえないので、歌丸さんと小三治さんは、はやめに寄席や劇場に足を運んでおくことをオススメします。

 最初の落語との出会いは、じつは談志さんではなくて、小学生のころ、本でなんです。母が「落語名作全集(立風書房)」という本を持っていて、それを従兄のお兄さんが遊びに来たときに読んでいたのを、僕も真似して読むようになったんです。

 当時は、談志、円楽、志ん朝はもちろん、小金馬、小圓遊、小益、三枝、仁鶴とテレビに落語家がたくさんでていて、笑点もやっていたのですが、落語家が落語をやっている姿で記憶にあるのは柳家小さん、春風亭柳昇と桂米丸くらいがおぼろげに記憶にあるかないかといったところです。熱心に聞いたりはしていませんでした。

 ちなみに、古典落語には漫才や芝居のような台本がないので、活字になっているものは、どこかでだれかが話したものを記したものです。だから、絶対的なものではなく、演者によっても、同じ人でも時と場合によって、大まかな筋以外はだいぶちがいます。

 好きだった話は「目黒のさんま(金原亭馬生Ⅹ)」ですね。子供にもわかりやすい。じつは最近、馬生にハマってます。
 いまも、テレビのお笑いでトップといっても過言ではない明石家さんまさんは落語家ですからね。落語しませんけど。
 落語は浮いたり沈んだりしながら、まだしばらくつづいていくだろうと思います。

 最後に、落語をちゃんと聞いたことがない人にオススメの落語家。
 現在、生で聞きに行くなら、春風亭小朝さんと立川志の輔さんが抜群にうまくておもしろいです。落語らしい落語。
 昔の人をCDで聞くなら、三遊亭金馬Ⅲ、桂文楽Ⅷが歯切れが良くてわかりやすいです。

 志ん生、圓生、志ん朝はそんなに好きじゃないかな。

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